リネンの服のお話
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リネンの歴史
人類が亜麻(リネン)を使い始めて1万年になります。紀元前8000年に世界文明発祥の地チグリ
ス・ユーフラテス川に芽え、リネンは人類最古の繊維と言われています。エジプトでは、リネ
ンは”Woven Moonlight(月光で織られた生地)”と呼ばれ、神事に使用されました。また聖職
者の衣類はリネンの糸で編まれ、純潔のシンボルと考えられていたのです。
聖書の中にも記されている繊維として18世紀頃はとくに多く生産されて、重宝されました。
人類最古の素材としてヨーロッパに長い歴史を築きあげ、現在まで衣料素材としてもその伝統
を誇り続けています。
麻の種類
「リネン/亜麻」と「ラミー/苧麻」
日本で「麻」と表記されるものには「リネン/亜麻」と「ラミー/苧麻」の 2種類あります。
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「リネン/亜麻」は、亜麻科に属する一年生の草木で、草丈は80~120cm、花は、色は紫ま
たは白が普通ですが、青やバラ色のものも見られます。繊維の太さは、約23ミクロン、長さ
は20~30mmで、10~45個連結して、網目状の緩やかな繊維束を形成しています。加工前を
フラックスと呼び、糸及び製品はリネンと呼ばれています。
「亜麻色の髪」と欧州女性の美しい髪色を表現するように、独特の光沢があります。これは
繊維が細くて、しなやかさがリネン(亜麻)の特徴だからです。フランス語でLinen (リネ
ン)を Lin(ラン)と呼び、Lingerie(ランジェリー)下着の語源にもなっています。
(※日本では明治以降に栽培されはじめた、まだ歴史が浅い素材と言えます。)産地は、ロ
シア・ポーランド・フランス・チェコ・ルーマニア・ベルギー・中国。
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「ラミー/苧麻」は、イラクサ科に属する年に5~6回の収穫アジアで昔から栽培され、硬
質で、天然繊維の中でもシャリ感が特徴の素材です。が可能な多年生の草本類で、 草丈は、
通常1.5~2.0mになります。葉の白色の細毛を密生しているものを「白葉系」と称し、「う
らじろ」の語源となっています。繊維は平均約60mm前後で植物繊維中最も長く、表面は平
滑で縦走する条線と関節状の筋をもっています。(※繊維に腰がある為、肌に直接あてると
チクチク感やごわごわ感を感じます)日本では、飛鳥・奈良時代に、ラミー(苧麻[ちょま
])が衣料として愛用されていたことが日本書紀等にも記されています。産地は、ブラジル
・中国・フィリピン。
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同じ『麻』でも、「リネン/亜麻」と「ラミー/苧麻」まったく肌触り、特性が異なる素材で
す。このことをご理解いただき、ヨーロッパのリネン(亜麻)をお楽しみください。
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リネンの服のいい話
⌘肌に優しく、丈夫な天然繊維
リネンの服は、肌にやさしくサラッとして、爽やかな涼感があるのが大きな特性です。リネンは
ペクチンも含まれており、触れてもチクチクせず、常にソフトな触り心地を保ちます。さらに
コットンやシルクに比べ、吸水・発散性に優れている為、水分や汗をすばやく吸い取り発散さ
せます。吸水性はコットンの約4倍と優れ、水にぬれてもすぐに乾くので便利であると同時に、
雑菌の繁殖を抑制し臭いも抑える抗菌作用があります。また、天然繊維のなかで最も強い繊維
です。洗濯にも強い素材です。繰り返し洗うごとに風合い、柔らかさはいっそう増し、長年使
うほどに肌になじみ愛着が湧きます。
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⌘呼吸するリネン
人の皮膚と同じように、リネンは呼吸する素材です。中空繊維のリネンには、
繊維の中に空気
が含まれていて、暑い気候では湿気を吸収すると共に熱を逃がし、お肌を涼しく保ちます。一
方、寒い気候では天然のサーモスタットの役目を果たしてくれるので、体温を保つ働きがあり
ます。体温に合わせて温度調節してくれます。つまり、夏涼しく、冬暖かいリネンの服は、オ
ールシーズンに適した繊維なのです。
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⌘リラクゼーション
繊維の持つ微細破壊の特質により、リネンの服を身につけると軽いマッサージ作用が働き、
血流を優しく刺激し、リラクゼーションが得られます。ヨーロッパでは、リネンを当てたとき
の傷の治り早さが証明されており、古傷にリネンの包帯を巻いたり、リネンの衣類を着たとき
に痛みが軽減することも報告されています。人間の細胞がフラックスの細胞を完全に分解して
くれることから、リネンが手術糸として使われることもあります。また、肌荒れやアトピー性
皮膚炎など、各種お肌のトラブルに悩まされている人々にとって、リネンが理想的であると言
われています。これは、リネン繊維が自然のpHバランスをもっていることや、菌を寄せ付けに
くい、通気性がいいなど様々な特徴を持っているためです。特にお肌の敏感な方にも安心して
使っていただける素材なのです。
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⌘エコロジーなリネン
リネンは、植物性の繊維ですから生分解性にも優れ、土に育まれ、
土に還る最もエコロジーな
繊維です。また、リネンの原料であるフラックスは、農薬や化学肥料をあまり必要とせず、少
しの水でぐんぐん育ちます。また、土壌の質や生態系への配慮から、一度収穫を終えた土地で
は、向こう7年のフラックスの栽培が禁じられています。リネンは地球と人に優しい最良の方
法で作られているのです。
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⌘リネンの個性
リネンは、繊維の伸度が低く回復率が小さいため変形すると元に戻りにくく、「しわ」になり
易いのです。また、
他の繊維との混紡、交織等を行っても麻の特性は失われず、むしろ相手繊
維と融合して「新たな風合い」が生まれます。優雅な光沢としっとりした上品な肌触り、この
自然に逆らわないあるがままの個性 ある風合いは、天然繊維のリネンだけがもつ優れた感触で
す。
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